くったり革のデイリートートバッグを作りました

皆さんこんにちは。
今日はお店営業日です。
サイトをご覧頂いた方や、鬼子母神でお求めいただいた蛇腹コインケースの手直しのご用の方など、ぽつらぽつらとご来店いただいています。

お客様にご来店いただいた際は、呼び鈴を押していただくようにしてあり、ピンポン♪の音を聞いてそそくさと店舗の方に降りますが、それ以外は2階の工房で制作を進めています。

月末も近いので、ご注文分の政策の追い込み中。
昨日今日はブラウンのくったり革のデイリートートSのショートハンドルのを作っていまして、先ほどやっと出来上がりました。
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最近、ブログでメイキングのご紹介の機会が減っているなぁ・・と気になっていたので、今回は写真を取りながら進めてみました。

ということで、紹介させていただきます。。。
本題に入る前に前置きさせていただきますが、なんにおいても絶対的に正しい!方法というものはなく、あくまでもナチュラルセット流ということで御覧ください。
特にこのバッグについては、理由があって、量産品では絶対やらないハズの口周りの作り方をしているので、こんなもんだんだ~。とお思いにならないようにお願いします。

それでは始めます!
裁断して、厚みを調整した状態の革を並べたところです。
光の陰影でお分かりになると思いますが、今回はちょっとシボがある個体の革です。
一番上が持ち手(片方分だけ)、その下が口周りの内側、中央が説明不要の胴(一番面積の広い本体の革を胴といいます。以後、胴で)、両脇がマチの上側、下の二枚が底マチです。
(どこかで見た気がしたと思ったら、以前、美術本でみたこちらでした)

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シボチェック。
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裏返したところも見ておきましょう。
革は切って、ハイ縫いましょう!とはいかず、全体的にも、部分的にも、厚みを調整する作業が必要です。
全体をご覧いただくと、それぞれのパーツの外周付近の色が白っぽく見えると思います。
ここは目的に応じて薄くしてある部分です。

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一番上の持ち手は、写真の上下1センチずつ薄くしてあります。ここを折り返すわけです。
さらに中央に溝を掘ってあります。上下を折り返したあと、中央で二つ折りにして、合わせ目をミシンで縫うという流れになります。
革のタチによっては、中央の溝は必ずしも必要ではないのですが、多少(1.4ミリほど)厚みもあるし、繊維もそれなりにしっかりしているので、折れ線をシュッと綺麗に出すために溝を入れました。
その下は内側の口周り、さらにその下は胴の口周りで、これらも上端をそれぞれ1センチずつ薄くしてあります。
それぞれ折り返して製作工程の一番最後で縫い合わせることになります。
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この写真は底の合わせ目のところです。
これらは2センチ幅で薄くしてあります。2つを合わせて縫い代1センチで縫い、縫い代部分を折り返すので、折り返された縫い代部分が表に響かないように、縫い代部分と合わさる側も薄くしてあります。

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まず、両マチと底の計4つを縫い合わせます。

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上述のように、縫い代部分をローラーで折り返します。
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冒頭部分で縫い代部分の厚み調整の話はしましたが、パーツごとの厚みについては触れてませんでした。
マチについては、底の2枚は胴と同じ1.7ミリくらい、両脇については、口を閉じる際の抵抗を減らすように、1.2ミリクライに下げています。
写真は底の厚みを測っているところ。ハリは1.8ミリ弱を指しています。
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こちらは両脇。1.2ミリ弱を指しています。DSC_9014

飾りステッチを入れるための縫い穴を開けています。
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余興として、ハリの糸通し分解写真をば。
まず、糸の端から少し残して、波波に刺します。
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糸の端っこを穴に通します。

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波波してた部分を針穴の方向に寄せて・・・・

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そのまま更にしごいて、針穴から出ているしっぽをなみなみ部分に通してしまいます。DSC_9024

これで完成。
撚り合わせてある糸のセンイの中に、糸の端っこを通してしまうことで、相応の抵抗が生じるようになり、抜けにくくなります。
もっと長い辺を縫う手縫いかばんなどの場合、もっと抵抗が大きくなるように「なみなみ」部分を5回とか6回とか、もっと往復させて長くします。(教則本には糸そのものをほぐすやり方もありますが、これで十分かなぁと思っています)

DSC_9025飾りステッチができました。
写真上下が両脇、中央が底です。
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次に持ち手です。
1センチ幅で薄くしてある写真上下を折り返す前に、伸び止めのナイロン製のテープを貼っておきます。
貼ってある位置は折り返す際のところです。折り返してミシンで縫う際、ちょうどこのテープを踏んでいくので、伸び止め効果がしっかりでます。
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これがテープの現物です。
伸び止めテープの中では比較的薄いものですし、片側にしか貼ってませんが、小ぶりのバッグなのでこれでいいと思います。

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薄くしてある部分に両面テープを貼り、折り返します。

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両端を折り返したあと、一般的には、中央に膨らみを持たせるために芯っぽいモノをいれます。
ウレタンでできた材料が主流ですが、今回は革を使ってみます。
革の表面を取り去ったスプリットレザーを1ミリ弱の厚みに調整したものを両面テープで貼っています。
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最後に二つ折りです。

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ミシンをかけて出来上がりです。

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これは0.7ミリの厚みの不織布。
ちょっと厚みを出したり、強度をもたせたりするために、市販のバッグには様々な厚みの芯材が使われています。
今回のバッグでは、持ち手を縫い付ける胴の裏側のところに使っています。
これによって、強度をもたせるのと、他のところに比べて幾分硬くすることで、持った時に、持ち手の付け根と付け根の間が外側に飛び出にくくする効果を狙っています。
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胴の上端中央に乗せて、縫い穴を開けているところ。
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持ち手の方にも穴を。
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その後、縫い付けます。

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片側が縫い終わりました。
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その後、胴とマチを縫い合わせて、表に返し、縫い合わせ部分をしごいて整えます。
(一番集中するところだったので、その間の写真を数枚撮り忘れました・・)
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内布にとりかかります。

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縫い付ける前のポケットです。
上のポケットの右側は携帯・スマホポケットです。
以前の携帯はだいたい大きさが決まってましたし、スマホもこれまでは大きくてもギャラクシーくらいの幅を考えておけばよかったですが、今後、もっと大型のものもでてくるようです。
大は小を兼ねるといっても・・・これからどうしたらいいでしょうかね。

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ポケットをぬいつけました。
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まず片側にマチを縫いつけます。
外側の革はマチが4ピース構成でしたが、内布は分ける必要がないので1ピースです。
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もう片側もつけて袋状に。

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で、これがこの製品の製法の超イレギュラーなところ。
口周りの内側の革を単体のパーツとして用意します。
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そして、口に内布に仮止めします。
通常は、胴、マチの内布のそれぞれ上端に革を縫いつけておいてから、袋状に縫うので、2枚前の写真の段階で、すでに口周りに革がついた状態になります。
ただ、その場合、外の革と内側の革、それぞれの縫い合わせ目が同じ位置になります。これはめちゃくちゃ当たり前のことで、市販されているバッグのほぼ100%がそうなのですが、このように合わせ目の位置をずらして厚みが出ないようにしておくほうが、マチがおとなしく内側に折りたたまれた状態でいてくれ(やすい)のではないか。と考えて、こんなやり方を思いつきました。

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ちなみにコレが完成の状態です。
まあ、難しく考えずに、一般的なやり方で、合わせ目のところをモッタリしないように薄く仕上げればいいといえばいいのですが、小ぶりのバッグで脇が飛び出しやすいし、合わせ目を薄くするとその分強度が落ちるので、互い違いにしておくほうがその点でもメリットがあるかな。という感じで今に至っています。
いずれにしても仕事のさばきは悪いので、量産に向くやり方ではありません;;

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次に口のマグネットの部品を作ります。
(今回バッグを2個作ったので、このカットのみ2セット分写っています。ご了承ください)

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マグネットの足が通る部分に切れ目を入れます。
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座金?裏金?をあてて、足を通して折り曲げます。

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裏側にあてる革を用意して、ボンドを塗ります。
裏の革は上に行くに連れて薄くなるように加工してあります。
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ボンドを塗ったら乗っけます。
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乾いたら切り出して・・

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周囲をぐるっと縫います。

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コバ(断面)に染料で色をさして・・

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仕上げ材を塗って磨きます。

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口の内側に縫い付けます。

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縫い付けたところ。

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出来上がった内側パーツを落としこんで・・

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口周りを縫って出来上がりです。
実際に縫うところは、例によって頭から飛んでしまったので、製作工程はこのカットででまとめてしまおうと思ったのですが、メイキングといってながら、クライマックスはナシはないだろうということで・・・

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縫ってるところ再現シーン。(実際は縫い終わった製品です)
これは俗に「腕ミシン」なんて呼ばれるミシンで、下糸が入っているお釜が右側からニュッと伸びている腕の先に入っているので、このように袋物を突っ込んで縫うことができます。

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出来上がりはこちらです。
なかなかいい感じに出来ました。

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ということで、総勢52カットのメイキングご紹介でした。
胴とマチの縫い合わせシーンが抜けている割には、持ち手やマグネットのカットが多すぎるなどムラがありますが、そこも手作り感ということでお許し下さい。

製品のページには、まだこのバッグの写真をアップしてませんが、一応リンクをおいておきます。
くったり革のデイリートートS (マルチカラー)

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