イタリアンレザーのふっくらがま口ポーチのメイキング

みなさんこんにちは。
連日の猛暑で体調を崩しそうなので、今日は今夏はじめてエアコンをつけています。
涼しいです~~。

さて、当エントリでは、表題にあります、イタリアンレザーのがま口のメイキングをお目にかけたいと思います。
ご自身でハンドメイドされる方はもちろん、どうやって作るのか興味がおありの方に御覧いただければと思います。

まず出来上がりの写真。
幅は19cm(底)・22cm(中ほどの膨らんでいるところ)で、高さは13cm(つまみ部分含まず)
マチの幅は6.5~7cmといったサイズです。

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まずは型紙を用意します。
上(A)が外側の革、下(B)が内布、右(C)が内布につけるポケットです。

(A)には焼き印の、(B)には革タグとポケットの位置決めの時のためのマドが切ってあります。
(A)(B)共にカドの膨らみを出すための切り込みが付けてあります。

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外の革の型紙に対して、内布のそれは、少しだけ寸法を小さくしてあります。

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元となる大きな革の厚みが3ミリ弱あり、ポーチ作りには厚いので、必要なだけ切り出した後、厚みを調整することとします。
まずは型紙を当ててざっくりと荒裁ちします。

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次に革漉き機で厚みを調整。。しようと思ったのですが、前回使った後に手入れしてなかったので、泥縄対応します。
仕上がりへの影響の大きい、ローラー部分の掃除と油さし(下でバラされているやつ)。と、本体中央タテに光っている刃の刃先の研磨をします。

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手入れが終わったら、革を通して薄くします。

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1.4ミリに減らしました。

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裏から見た感じ。
左が加工後です。裏のケバケバした部分がすっかりなくなってますね。

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厚み調整が終わったところで、型紙を当てて切っていきます。
型紙はがずれないように、文鎮で押えます。
こういう円形の製品の場合、一個だけだと、置いた場所を軸としてた回転方向にずれやすいような気がするので、複数置いてみてます。

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黒の大きなカッティングボードの上に、緑の小さなものを重ねているのは、このため。
くるっと回せるようにすると、姿勢が安定して切りやすいのです。(横着してるともいいます)

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切り抜き完了しました。

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上端部分のアップ。細かな切りクズが写っています。
これは、革同士を二枚合わせて縫い合わせるときや、内布を入れて口周りを仮縫いするときの位置決めのための目印として入れたキザミのくずです。

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革が切り抜けたところで、縫い代部分の厚みを減らしましょう。
革漉き機で回転している刃の目前の位置に、革を押し付けるための金具(押さえ金・おさえがね)は、目的に応じて交換します。

大きな面積をやるときは大きなもの、小さい時は狭いもの。という選択が基本的な選択ですが、革にミゾをつけるために刃先(革に当たる部分)に凹凸を付けたものや、ローラーのような形状にしてあるものなど、いろいろあります。
といっても、弁慶の刀のようにたくさんの押え金を使いこなすのは、革漉きのみを仕事にしていらっしゃる革漉き屋さんの話で、私のところは基本的な数点だけでこなしています。

ということで、幅の狭い左側のものに取り替えて臨みます!

DSC_2435漉き中です。
革の端っこから、実際に縫う線までの間(いわゆる縫い代)は4ミリですが、表返したときに縫い合わせ目がスッキリ見えるように、もう少し奥まで漉きます。
今回の場合で、全体で12ミリくらいでしょうか。

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漉き上がりました。
なお、漉いてある部分は、まったくの平らではなく、ナナメになっています。
この角度は、前述の押さえ金の角度によって調整することが出来ます。

用語も少し追加しておきます。
最初の段階で粗裁ちした後に行ったように、革全体の厚みを減らすのを「ベタ漉き」といい、今回のように縫い代に代表されるような部分的な漉きを「コバ漉き」と呼んでいるようです。
個人でクラフトされる方を含めて、一般的に、ベタ漉きは専門の業者さんにお願いしてやってもらうことがほとんどです。
コバ漉きは、量がまとまる製作者さんだと、コバ漉き屋さんにお願いすることもありますが、私のところのように量が少ない場合は、ご説明しているように自前の革漉き機でやることになります。なお、個人のクラフトの方は、時間をかけて革包丁で削ぎ落とされるようです。

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焼き印を押します。

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次に底の膨らみのところを縫います。
実際の縫製に先立って、縫い終わりの位置の印を付けておきます。

なお、この印の位置は、冒頭御覧頂いた型紙で規定してあります。
目見当だと、どうしても位置にばらつきが出てしまいます。革の裏側に型紙を当てて、小さく空けた穴からペンで印をつけることで、正確な位置をとっています。

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それでは縫っていきます。
切り込みの端っこをきちんと合わせ、軽くローラーでしごいて縫う部分をフラットに近づけ、先ほどつけた点に向かって縫っていきます。

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縫い終わりました。
写真奥が縫い始め、手前が終わりです。
一番手前まで縫い進めて、3目戻って、また一番手前まで縫って、再度3目戻したところで終わりにしています。
糸の端は2,3ミリ残して切って、ちょこっと火であぶって処理します。

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縫った所を裏側からローラーでしごいて整形します。
布製品でも、アイロンで形を整えると思いますが、布に比べて硬さのある革製品の整形工程は、出来栄えへの寄与がもっと大きく、力も結構必要です。

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カドを整形したら、2枚合わせて中表(なかおもて)で縫い合わせます。

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縫い終わりました。

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表返して、縫い代を倒してしごき、整形していきます。

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こちらは表替えしたままの状態。

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こちらは整形後。
なかなか手間がかかってるんですよっ!

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タコスシェルが出来た所で、内布にとりかかります。
コットンとか、リネンとか、ナチュラルっぽい生地も素敵ですが、テリがあって高級感のある、こういった用途に向けて作られた化繊の生地を使ってみています。
「シャンタン」という名前の生地です。

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切れました。
この生地は御覧のように、織り柄?がはっきりしていますので、出来る限り水平になるように気をつけて裁断しないと美しくないですね。

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所定の位置に革タグを仮止め。

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縫い付け終わりました。

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縫い針について、少し書きます。
工業用ミシンで使う針の先っちょのカタチには、家庭用のミシンでのおなじみの丸針(まるばり・左)の他に、S針(えすばり・右)があります。
丸針はオールマイティに使える針ですが、針先が鉛筆のようなカタチをしているので、針の跡(穴)も当然丸くなります。
これに対してS針は先が多くの剣の先のように、幾分平らになっています。

革を丸針で縫った場合、極端にいうと、丸く空いた針の跡を、糸が線状につないだような仕上がりになりますが、S針だと、この平らな面を縫い線と平行にセットすることで、針跡が糸のラインからはみ出ずにすっきりとした見た目に仕上がります。

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比較のために両方で縫ってみました。
左がS針、右が丸針。

ナチュラルセットでは、できるだけ針穴が目立たないように、ミシンメーカーの推奨よりも随分細い針をつかっているので、差がわかりにくいかもしれません(汗)が、丸針で縫った右は、針穴がポチッと点状に見えるのに対して、S針の左については、穴は穴として空いているものの、糸の線からはみ出てないので、比較するとすっきりした印象になっていると思います。

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さて次に、ポケットを付けましょう。
なお、布地を縫う場合、前出のS針のまんまだと、刃物状になっている針先が織物の繊維を切る感じになってしまい、損傷を与えてしまいますので、丸針に戻します。

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ポケット終わりました。

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それでは縫い合わせていきましょう。

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こうなりました。

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これを表の革の中に沈め、口周りを両面テープで仮止めします。

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その後、端っこぎりぎりのところを縫って一体化させておきます。
両面テープによる仮止めでも、足りるといえば足りるのですが、口金にはめ込んでいる最中に、革と内布が別れてしまったりすると、収拾がつかなくなるので、縫っておくほうが安全だと思います。

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次に口金にはめていきます。
コチラが使う道具です。

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口金の内側に接着剤を塗ります。というか、流し込みます。
表にはみ出ると、材料を汚しますし、除去が手間なので、付け過ぎないように気をつけます。

付け方は、接着剤のチューブを微妙に圧迫して、ノズルからタラーリと垂れてくる接着剤を、口金のミゾで受け止めるように、曲芸みたいな感じでやっています。

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接着剤がちょっと多かったりした場合は、すこし揮発させて整えた後、袋部分をはめ込んでいきます。

袋部分に刺してあるマチ針は中心を表しています。口金の中央にマジックでつけた目印と合わせるためです。
手前のクリップは、反対側がビョンビョンして邪魔にならないように抑えています。

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一通りはめ込んだら、変わったカタチの道具で紙ひもを押し込んでいきます。
使用する紙ひもは、手芸店で売っている一般的な紙ひもです。

グイグイと押しこむので、通常は見えなくなりますが、じーっと覗きこめば見えなくもありません。
クラフト紙の色では興ざめかな、と思い、内装に合った色に染めてから使うようにしました。

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紙ひもが入ったら、口金の脇を圧迫して潰します。

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最後に目印としてつけたマジックを落としておしまいです。

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できましたー。

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長々とお付き合いいただきありがとうございました。

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腕に覚えのある方はどうぞ挑戦してみてください。
そうでない方は、こちらへどうぞ~♪

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